**麻雀蒐穂録**

マージャンとはギャンブルとはゲームとは…そしてプロとは…!

遠い昔、歌舞伎町のけもの道を徘徊していた 畏怖るべきアウトロー達との交遊を
途切れた記憶の糸を紡ぎながら回顧録まがいに書き起こそうと思います。

 ※実体験以外に風聞や創作も加味するつもりです。フィクションとしてお読み下さい。

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メンバー百景(1-Q)

盆という思いもよらない場所への言及に、私は一瞬息を呑んだ。
――盆仕立ての花会の場で会っていると言うのか…?
困惑の眼差しを露わに、アイダの顔を窺いながら、
過去に行き掛かりで足を運んだ花会の記憶を辿っていた。
だが――。
すぐに、有り得ないことだと気付いて苦笑が込み上げた。
私は赤坂の花会に出向いたことなど無かったからだ。
カジノならある。昔、赤坂のビルにあったカジノには、
仕事絡みで毎晩のように顔を出していた時期があったのだ。
しかし赤坂で盆の立場などには一度も足を運んだ覚えは無い。
「私、赤坂の筋には縁がありませんよ、たぶん人違いでしょう…」
そう答えてから、おかしいと気付いた。
相手は私の目の前で顔と名前を確認して話しているのだ。
人違いということはないだろう。
人違いでないとしたら、遇った場所を勘違いしているのか…?

アイダは意味深な微笑をうかべて微かに首を傾げた。
「弥生さんと一緒に…、何度かお目にかかっているのですが」
「弥生…?」
「銀座のクラブに勤めていた…」
「…!」 
思い出した。いや、アイダの素性ではない。
赤坂にあった『ボンボヤージ』という店のことを…。
カジノの客を連れた銀座のホステスとの待ち合わせ場所として、
使っていた深夜営業の小さなレストランだった。
私にとっては馴染みの薄い店だったが、
確かにホステスや常連客の大半が『ボンボヤージ』とは呼ばず、
『ボン』という略称で呼び慣らしていたような記憶があった。
「ボンって、ボンボヤージのことですか…?」
「ええ、あの後、あの店は私が譲り受けたんですが…」
あの後と言われても何の後なのか、私には判らなかった。
古い話で、ボンボヤージの記憶さえも定かではないのだ。

弥生というホステスがいたことは覚えていた。
当時、私達の仲間の一人が銀座のホステスと同棲していたのだが、
弥生はそのルミというホステスと同じクラブで働く同僚だった。
ラテン系のハーフのような顔立ちと長い黒髪が印象に残る、
フラメンコのダンサーのようなイメージの女だった。
そして実際に彼女の踊りのセンスには目を瞠るものがあったのだ。
知り合って間もない頃、ディスコクラブの喧騒の中で聞いた話では、
中学生の頃から原宿のホコテンに通って踊り狂っていたらしい。
あの『一世風靡』の前身として知られる竹の子族というやつだ。
高校生になってからは六本木や赤坂のディスコに通い詰め、
遊ぶ金が欲しくてキャバレーでアルバイトをしていたそうだが、
そこでスカウトされて銀座で働くようになったのだと言っていた。
しかし、弥生というホステスに関して私が知っていること、
覚えていることと言えば、まずそれ位のことでしかなかった。
その色香と容姿に食指が動かなかったと言えば嘘になるが、
あの時期、ホステスは仕事のパートナーとして接していたので、
銀座や新宿の名うての綺麗どころとの付き合いなどもあって、
一々接した女に現を抜かしていられる情況ではなかったのだ。

クラブのホステスをパートナーとしていたその仕事というのは、
仲間で新宿のマンションの一室にルーレットの台をセットして、
彼女達が引き込んだ客を相手に凌ぎを掛ける仕事だった。

しかし、弥生と関わった当時のことを色々と思い出してはみたが、
目の前のアイダとの接点はどうしても思い出せなかった。
ボンボヤージで弥生と一緒に私に会っているというのなら、
彼女が銀座のクラブから連れて来た客の一人だったのか…?

それならば特に問題は無いはずだ。麻雀でさえなければ…。
ルーレットでは、麻雀のような強引な手法は使っていない。
客を殺しに掛けるような阿漕なまねはしていなかったからだ。

私は安心すると同時にふっと我に返った。
「ボン」と言われて、どうして賭場だと思ってしまったのか。
相手の手の内が読めずに不安に駆られて考え過ぎている。
全てに神経を尖らせて慎重に構えているつもりが、
的外れのミスばかり犯していると気付いて可笑しくなった。
打ち出される捨て牌に逐一過敏に反応してしまうのは、
疑心暗鬼が生じていて場が見えていないということだ。
余計な思惑を捨て、冷静になって目の前の事実だけを観れば、
アイダの眼にも言葉にも、険は何処にも見当たらないのに…。

ウエイトレスがコーヒーを運んできてテーブルに並べた。
私は自分のコーヒーに砂糖を掬い入れながら、
もう、失念していることを素直に詫びてしまおうと思っていた。
思っていたのだが…、私の口を衝いて出た言葉は、
「最近は、カジノは流行らないようですね」
なんとも歯切れの悪い誘導尋問だった。
アイダはコーヒーカップに伸ばしていた手を一瞬止めて、
「カジノ…ですか?」
そのまま不思議そうな表情で訊き返してきた。
「ええ、そこいら中、ゲーム屋が増えてしまって…」
カジノの話題の手応えの無さに不安がかすめた。
アイダは、そういうことかと二三度大きく頷きながら、
「私は麻雀以外の賭け事はしないので、分かりませんが…」
「…!?」
――麻雀!? カジノの客では無かったのか…!?






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年齢:知ってどうする?
職業:まとも、だから退屈で
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   出来れば天国から
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