**麻雀蒐穂録**

マージャンとはギャンブルとはゲームとは…そしてプロとは…!

遠い昔、歌舞伎町のけもの道を徘徊していた 畏怖るべきアウトロー達との交遊を
途切れた記憶の糸を紡ぎながら回顧録まがいに書き起こそうと思います。

 ※実体験以外に風聞や創作も加味するつもりです。フィクションとしてお読み下さい。

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金色夜叉

『金色夜叉』とは、
「熱海の海岸散歩するぅ~、貫一、お宮のぉ~」
と、流行歌にもなった文豪尾崎紅葉の未完の小説の題名です。

最近では「きんいろよまた」と読む若者もいるそうですが、
近代文学はおろか、現代文学にさえ疎い私としては、
誤読を咎めるよりも笑って済ます方が無難だと思ってしまいます。

活字離れの世代にとって漢字は言葉の音符、表音記号でしかなく、
表意記号としての役割が希薄になっているのでしょう。

「夜露死苦」というやつですね。まあ面白いからいいか…です。

で、なんでタイトルが『金色夜叉』なのかといいますと、
前回の記事――鷺沢萠で引っ掛かったのです。
ヒロインのお宮さんの苗字が鷺沢だったような気がしたのですが…
調べてみたら鴫沢宮でした。

サギとシギは別の鳥ですね。
むかし、猟銃を担いで田鴫(タシギ)を撃ちに銚子まで通ったな。
田んぼに散弾ばら撒いて…ビニールハウスが穴だらけ…御免。
鷺は保護鳥ですから撃てません。白い野鳥は駄目なんです。

え~と「きんいろよまた」の鴫沢宮さんと間貫一君の物語ですが、
新派の公演以来、様々な舞台で演じられる名場面があります。

熱海の海岸で学ランにマントを羽織った一高生の貫一君が、
縋りつく恋人のお宮さんの不実を責めるくだりの台詞です。

貫一はお宮さんを高下駄で足蹴にして罵倒するのです。

「僕がお前にものをいうのも今夜限りだ…云々」
「一生を通して僕は今月今夜を忘れない…云々」

確かな記憶ではありませんが…

「金剛石(ダイヤモンド)に眼が眩み…」
とか言う台詞もあったような気がしたのです。
温泉旅館の舞台で観たコントだったかも知れませんが…

前置きが長くなりました。

『金色夜叉』=デーヤモンドに眼が眩み…です。

では本編の開演――。


数ヶ月前のその日、
私は歌舞伎町の一番街にある馴染みの雀荘で夜を明かした。
「ラス半」のタイミングを逃したまま、深夜の卓割れを気遣って、
ダラダラと朝まで打ち続けてしまったのだ。
調子が悪ければ席を発つこともできたのだが、勝ち頭だった。

気の無い博打は打ってはいけない――。
そんなことは百も承知だ。

でもねぇ、実はその日、店側が真っ赤っかの大赤字営業。
昼も夜もメンバーが全員、出ると負けの最悪パターンで、
勝ちを得た常連客の引き足が早かったわけです。
私がやめれば、残りの二人の客も席を発ちそうな気配だった。

古い友人でもあるマネージャーが、卓割れの気配を察して、
レジの奥から子犬が甘えるような眼で私をチラチラ見るんです。
どちらかと言えば、土佐犬に近い風貌なんですが、それが、
捨てられるんじゃないかと気を揉んでいる子犬に見えたわけです。

天羽さんは友人を裏切ったり捨てたりしたことはないのです。
あ、女性については、色々と見解の相違もあると思いますので、
一方的に断言はできませんが…

その夜は、自分からは卓を割るまいと覚悟を決めた。

現在の私にとって、麻雀は娯楽であって博打ではないのだ。
様々なギャンブルに関わる仕事をシノギにしていた時期はあるが、
若気の至り。剣呑な世界を無為に彷徨っていたような時代だ。
冷めた感性だけが研ぎ澄まされる闇夜のケモノ道の記憶…
一歩間違えば生死に関わるような緊張の日々、安息の無い生活には
常人の枠を超えた精神の昂揚、痺れるような快感も確かにあった。
だが、それはもはや遠い記憶であり、若き日の思い出でしかない。

今の私は金銭を抜きにして麻雀というゲームを楽しんでいる。
だから情を絡めて付き合うこともやぶさかではないのだ。

「勝負の最中に金を数えてはいけない…」

若い時分に、その筋の玄人から受けた教示だ。
その時は「なぜ…?」とは思ったが訊きはしなかった。

経験を重ねるに従って、道理だと思うようになった。
精神の揺らぎ、集中力の崩壊…心視点の問題なのだ。

金は飽くまで勝負の要具であって、勝負そのものでは無い。
勝っていても負けていても、金を数えたくなったら止め時だと、
それは今でも頭蓋骨に刻み、肝に銘じている。
だから、勝負の途中で金は数えない。
数えはしないが… 

サイドテーブルに置いた銭籠は嫌でも見えるわけです。
溢れていた札が溶け出したのは午前2時を回った頃からだった。
そして、始発電車の時刻までにはきれいに底をついていた。

情に引かれた時点で結果は予測していた。
こうなることはハナから覚悟していたわけで、
精神衛生的にはどうということもなかったのだが…

カチン!…ときた。

つづく…

済みません…この後は牌画を使いたいのですが、面倒です。
次回にします。明日ではありません。次回…です。

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