**麻雀蒐穂録**

マージャンとはギャンブルとはゲームとは…そしてプロとは…!

遠い昔、歌舞伎町のけもの道を徘徊していた 畏怖るべきアウトロー達との交遊を
途切れた記憶の糸を紡ぎながら回顧録まがいに書き起こそうと思います。

 ※実体験以外に風聞や創作も加味するつもりです。フィクションとしてお読み下さい。

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メンバー百景(1-P)

アイダという名前からはまるで見当がつかなかったが、
目の前の男の面差しには、確かに見覚えがあると思った。
――何処で遇ったのか…?
記憶が曖昧で思い出せないということは、 
重要な場面で接触した人間ではないということだろうが…。
吉田から電話を受けた時点で、相手の素性や仕事くらいは、
訊いておくべきだったと後悔した。

当の吉田は、私達が社交辞令の挨拶を交わしている最中に、
スポーツ新聞を持って一つ隣のテーブルに移動していた。
私とアイダは旧知の仲で、これから昔の思い出話とかで、
勝手に二人で盛り上がるとでも思い込んでいるのか、
まるで部外者のように離れて新聞のページをめくっていた。

私が会話の糸口を見出せないまま戸惑っていると、
「お仕事の方は…、時間は大丈夫ですか?」
アイダが気遣うような眼差しで訊いてきた。
「え?」
「忙しいと聞いていたものですから…」
言いながら吉田を一瞥してみせた。
私も釣られるようにアイダの視線を追ったが、
吉田は新聞に夢中でこちらの話は耳に入らないようだった。

――俺が忙しいって…? そう吉田が言ったのか…?

不思議に思った。
この頃の私は忙しい仕事などはしていなかったのだ。
少しばかり名前の知れた会社で営業の仕事に就いていたのだが、
その会社では仕事の采配は営業マン個人に委ねられていた。
出社してタイムカードを押し、ちょっとした会議を済ませれば、
あとは自由の身であり、自分の好きなように行動できた。
だから仕事で時間に縛られるようなことは殆どなかったのだ。

その辺のことは吉田もよく知っている筈だった。
なのに、なぜ忙しいなどと言ったのか…?
わけが解らず、返答に窮していると、
ウエイトレスが新客のためのオーダーをとりに来た。
アイダは、空になっている私のコーヒーカップと、
タバコの吸殻が溢れている灰皿を引き寄せ、
それをウエイトレスに手渡しながら、
「コーヒーを三ツ…」
迷うことなく三人分のコーヒーを注文した。

そのとき――、
私は初めて手抜かりがあったことに気付いて愕然とした。

約束の時間に遅れたわけでもないアイダが、開口一番に、
なぜ待たせて済まなかったなどと言って頭を下げたのか…。
そして、なぜ私の仕事の時間などを気にしたのか…。
灰皿だ――。

アイダは席に着く前に、吸殻が溢れている灰皿や、
空のコーヒーカップ見て不思議に思ったに違いない。
待ち合わせの時間と場所を指定したのは私の方だったからだ。
その私が、なぜ長い時間ひとりで待っている必要があるのか。

それは些細な疑問、取るに足らない違和感だろう。
だが、やはり不合理で不自然な展開には違いない。
アイダは気づいたのだ。そして不思議に思った。
しかし、それが自分への警戒心からだとは想いもよらなかった。
だから疑念を残したまま見えるものだけを受け入れたのだ。
待ち時間の痕跡を見て、済まなかったと詫びを入れたわけだ。
言わなくても良いような忘れ物の話まで添えて…。

それからアイダは私の困惑の表情に疑問を抱いたのだろう。
私の苛立ちを敏感に感じ取って、その原因を考えたに違いない。

時間を自分で指定しておきながら異常に長い時間待っていた。
なんのためにそんなに早くから来て待っていたのかと…。 
吉田からは、私は忙しい人間だと聞かされていた。
ならば、ここで誰か別の人間と会う予定だったのではないか…。
そしてその約束は反古になったか変更されたのではないかと…。

だから仕事や時間を気遣うような言葉が出たのだ。
アイダは吉田の話を真に受けたせいで的を外してはいたが、
洞察力は鋭い。決して盆暗の眼ではない――。
迂闊だった。灰皿は事前に替えておくべきだった。
久しく緊張や緊迫感からは無縁の生活を送っていたから、
手配りのタガが緩んでいたのだ。
もし、出会い頭の挨拶で「私もいま来たばかりですから…」
などと間抜けな応答をしていたら――、
薄っぺらな男だと冷笑を浴びていたに違いないと冷や汗が出た。

アイダの柔らかい視線からは好意の色を読み取りながらも、
私はぎこちなく頬笑むしかなかった。

そんな私の心中を見透かしたかのように、
アイダはフッと首を傾げて見せてから、
「だいぶ前に赤坂の盆でお会いしましたが…」
覚えていませんか…と問いかけてきた。

――赤坂の盆で…!?





PS
今回は麻雀の話を書いて無いので、
背景に牌画を入れておきましたから…<`ヘ´>
背景画はそのうちにまた替えちゃうけど…(-_-;)
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テーマ:麻雀 - ジャンル:ギャンブル

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